参考リンク:大学生の社交不安、推論の誤り尺度、自動思考尺度、不合理な信念測定尺度
今回,大学生 104 名を対象に,SAD 傾向をみるため,LSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale 日本語版), 推論の誤り尺度(Thinking Errors Scale:TES)を用い調査検討した.LSAS-J にて全学生の 9 割強が何ら か自覚症状があり,総得点は男性 71.30 が,女性 59.13 に比べ有意に高かった(p<.05).TES の下位尺度 得点は,全学生で,高い順に「自己関連付」,「拡大解釈と過小評価」,「べき思考」,「恣意的推論」,「完 全主義」であり,また,「べき思考」と「自己関連付け」以外は全て男性が女性より得点が高かった.男 性の LSAS-J の高群(80 点以上)は,低群(79 点未満)に比し「恣意的推論」と「拡大解釈と過小評価」 (p<.01)及び,「過度の一般化」と「自己関連付け」(p<.05)が有意に高かった.
4-3-2.社交不安と成績評価本研究で得られた最も重要な結果は,LSAS-J により測 定された社交不安症状の強さと,英語成績評価との関連に ついてである。「正常」~「かなり重度」まで 5 段階に分 類された群ごとに,成績評価の分布を検証したところ,「か なり重度」の社交不安を持つ学生が,英語科目において高 い評価を得られなかったり,単位を取得できていないこと が明らかになった。一方,上述の通り,GTEC の成績と, 社交不安症状との間には有意な関連が見られなかった。つ まり,社交不安症状が強い学生は,英語の基礎力について は他の学生と比べ大きな差が無いにも関わらず,様々な活 動でのパフォーマンスを踏まえて行われる成績評価では, 低評価を与えられがちであるという現状を表している。
本研究の目的は、看護師の negative な気分に影響を与える認知プロセスを明らかにすることである。・・・以上より negative な気分は、スキーマ、推論の誤り、自動思考のプロセスを 経て形成されることが示唆された。
3 )調査内容調査内容は、スキーマとして不合理な信念測 定 尺 度 短 縮 版( 日 本 版Irrational Belief Test;以 下、JIBT-20)、推論の誤りとして推論の誤り尺度 (Thinking Errors Scale:以下、TES)、自動思考と して日本語版自動思考質問紙改訂版(Automatic Thoughts Questionnaire-Revised:以下、ATQ-R)、 negativeな 気 分 と し て 日 本 語 版POMS短 縮 版 (Profile of Mood States:以下、POMS)の下位尺度 である抑うつ-落ち込み:以下、抑うつ-落ち込み(D) を用いた。■用語の定義スキーマ:推論の誤り:個人のもつ考え方の偏りであり、スキーマ よりも意識の上層に位置し、半意識的に認 知される思考である。自動思考:表層的で根拠がなく、瞬間的に頭の中に思 い浮かぶ考えである16)。Negativeな気分:気分(何らかの刺激により浮かび上 がった自動思考を介し知覚される感 情のうち特別の対象や内容を持たず、 比較的長く持続する感情の状態であ る17))のうち抑うつ気分、落ち込み 気分をNegativeな気分と定義する。TES:「推論の誤り尺度(Thinking Errors Scale:TES)」「全く当ては まらない(1点)」~「全く当てはまる(4点)」の 4件法で回答を求めた。合計得点(19点~76点)が 高いほど、考え方の偏りが強いことを示す。ATQ-R:自動思考尺度1週間のうちに質問項目が示す考えが浮かんだ頻度を、「全く思い浮かばない(1点)」~「いつも 思い浮かぶ(5点)」の5件法で回答を求めた。合計得点(40点~200点)が高いほど、自動思考が強いことを意味する。JIBT-20:不合理な信念測定尺度 (JIBT-20)不合理な信念を測定する尺度。20項目について、「まったくそう思わない(1点)」 ~「まったくそう思う(5点)」の5件法で回答を求 めた。合計得点(得点範囲:20点~80点)が高いほど、 心の深層の否定的な信念を強く持っていることを示 す。POMS:うつ-落ち込み(D)POMSは、置かれた条件で変化する一時的な気分・感情の測定が可能である。POMSは、緊張-不安(T-A)、抑うつ-落ち込み(D)、怒り-敵意(A-H)、活気(V)、疲労(F)、混乱(C)の6下位尺度30項目からなるが、本研究では抑うつ-落ち込み(D)の下位項目(5項目)をnegativeな気分の測定に用いた。解答は、過去1週間の気分で最もあてはまるものを、「全くなかっ(0点)」~「非常に多くあった(4点)」の5件法で回答を求めた。合計得点(0点~20点)が高いほど、...抑うつ-落ち込み気分(D)が強いことを示す。
「推論の誤り尺度(Thinking Errors Scale:TES)」
「全く当ては まらない(1点)」~「全く当てはまる(4点)」の 4件法で回答を求めた。合計得点(19点~76点)が 高いほど、考え方の偏りが強いことを示す。
スキーマとして
不合理な信念測定尺度 (JIBT-20)
※
20項目について、「まったくそう思わない(1点)」 ~「まったくそう思う(5点)」の5件法で回答を求 めた。合計得点(得点範囲:20点~100?点)が高いほど、 心の深層の否定的な信念を強く持っていることを示 す。
自動思考と して
ATQ-R:自動思考尺度
※
1週間のうちに質問項目が示す考えが浮かんだ頻度を、「全く思い浮かばない(1点)」~「いつも 思い浮かぶ(5点)」の5件法で回答を求めた。合計得点(40点~200点)が高いほど、自動思考が強いことを意味する。
negativeな 気 分 と し て
POMS:うつ-落ち込み(D)
※
解答は、過去1週間の気分で最もあてはまるものを、「全くなかっ(0点)」~「非常に多くあった(4点)」の5件法で回答を求めた。合計得点(0点~20点)が高いほど、..抑うつ-落ち込み気分(D)が強いことを示す。
反すうには,問題解決のために熟考する側面と, 自己や抑うつ症状に対して悲観的に考え込む側面があること が指摘されている(名倉・橋本,1999)。Treynor,Gonzalez & Nolen-Hoeksema(2003)は,前者のような適応的な反すうを reflection(以下,問題への直面化),後者の不適応的な反すうを brooding(以下,ネガティブな内省)と呼んでいる(松本,2009)。 ネガティブな内省は,否定的な自動思考を介して抑うつを悪 化させ,問題への直面化は,肯定的な自動思考を介して抑う つを軽減させると考えられる(西川・松永・古谷,2011)。し たがって,抑うつの悪化を防ぐためには,抑うつ認知だけで なく,問題への直面化を促進させ,ネガティブな内省を減ら す介入が重要と考える。そこで,本研究では,及川・坂本(2007) の大学生を対象とした抑うつ予防プログラムを参考に,問題 への直面化の促進をねらった内容を取り入れ,計 3 回の心理 教育プログラムを作成・実施し,抑うつ悪化の予防に関する 効果を検討した。プログラムの手続きと内容:大学の心理学関連の講義内(選択 科目)に実施した。プログラムは,認知の歪み,反すうのメリ ット・デメリット(第 1 回),問題解決の反すうと新しい考え 方を見つける学習(第 2 回),今の自分にできることを考える ためのコツと全体のまとめ(第 3 回)の計 3 回の内容から構成 された。■結果■ プログラムの効果を検討するため,調査時期(プ ログラム実施前と実施後) と 群(介入群と統制群)を独立変数, 各尺度を従属変数とする 2 要因の分散分析を行った。その結 果,認知的対処の自己効力感の「客観化・多面化」について, 群の主効果が認められた。下位検定の結果,介入群において プログラム実施後に有意な増加がみられた(Figure 1)。また, 反応スタイルの「問題への直面化」について,時期と群の交 互作用が認められた。単純主効果の検定を行った結果,介入 群において時期の効果が認められ,プログラム実施前よりも 実施後の方が得点は高くなっていた(Figure 2)。他の尺度に 関しては,交互作用および主効果は認められなかった。
社会不安障害・認知行動療法の参考リンク集
社交不安障害の認知行動療法一押し本
認知行動療法について非常に丁寧に書かれている本。
人前で話すのが苦手、緊張して上がってしまう、自然に人付き合いができず、社交をつい避けてしまうという状態は「社交不安障害」と呼ばれる。もっとも頻度の高い精神的な困りごとの一つで、有病率は一割を超える。しかし、自分を縛る不安の正体を知って、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能だ。実際にカウンセリングセンターで使われるプログラムを紹介しながら、克服の方法を実践解説。
人前で話すのが苦手、緊張して上がってしまう、自然に人付き合いができず、社交をつい避けてしまうという状態は「社交不安障害」と呼ばれる。もっとも頻度の高い精神的な困りごとの一つで、有病率は一割を超える。しかし、自分を縛る不安の正体を知って、有効なトレーニングを積めば、改善は十分可能だ。実際にカウンセリングセンターで使われるプログラムを紹介しながら、克服の方法を実践解説。
具体的な治療法、不安にとらわれるメカニズムの解説などを解説した、SAD治療の入門書的な本。
わたしは数年前にこの本を読んだことがきっかけで治療につながれました。